2010年2月20日土曜日

【R+ レビュー】クーリエ・ジャポン 3月号 貧困大国(アメリカ)の真実


レビュープラスさんから今月も献本をいただきました!
今月の特集は「貧困大国(アメリカ)の真実」(!)というタイトルです。

自由の国、富める国、世界最大の国というイメージのアメリカ。
その大国の裏側を知る特集です。

この特集の責任編集は「堤未果」さん。
恥ずかしながら、この特集を見るまでは私は知らない方でした。
しかし、調べてみると、最近注目されているジャーナリストの方なのですね。
9.11をきっかけに、アメリカの事を書き始め、昨年は第56回日本エッセイスト・クラブ賞、新書大賞2009
の2つの賞を獲得されているそうです。注目のジャーナリストの方です。

アメリカの内情

今月号の特集は結構衝撃的です。
富める国、世界のリーダーのアメリカの内情がこんなに”ひどくなっている”とは、衝撃的でした。

・ひとりあたり約130ドル/月支給される「フードスタンプ(食料配給券)」の受給者が激増している。
アメリカ国民の12%がこの制度を利用して毎日の食事を取っているようです。

・民間医療保険に入っても医療問題が解決しない。
皆保険でない国で病院にいっても保険がきかないため、莫大な慰謝料を払わなくてはいけません。
例で取り上げられていたのが、「短期医療保険」に入っていたケース。長期保険が切れたタイミングで入る目的で作られている保険に継続的に入っているが、六ヶ月更新の保険で、なにかあったときには、「既往症」ということで保険金が払われないことも。

・学生が進学費用のために借金漬けに。 
これまで大学へいくために奨学金が充実していたアメリカの大学。金融危機後の資金繰りによる予算削減と、利益追求型にシフトしているため奨学金が受けにくくなり、だんだんと大学に行きにくくなっている。
経済的に難しくても、優秀であれば大学にいけたアメリカの大学だが、今後こういったことが続くと、間違いなく国際的な競争力が落ちてしまう。

・刑務所ビジネスの民営化
「圧倒的に安いコスト」でモノを生産できるとしたら…。モノを作っている会社の人であれば、飛びつきそうな話ですが、それは刑務所で生産されます。
刑務所が民間企業運営となり、その数が加速して増えていきます。入所者を確保するために積極的に逮捕してみたり、保護観察として長期間監視を行ったり。
安いコストでのモノの生産だけでなく広大な土地を利用した投資信託まで…
利益追求型のモデルを優先させてしまうと、従来の「更生施設」としての役割にキケンな変化が起こっているようです。

個人的には、豊かな、優秀な人がいる(医療も大学も)社会だと思っていたのですが、それらを支える仕組みがここまで荒んでいるとは思いませんでした。

アメリカはどこへ向かうのか?

期待と興奮を胸にオバマ大統領が就任して1年。期待が失望に、興奮が冷めて現実に戻っている様をみて、アメリカという国がどこに向かっているのかが最近気になっていたところに、この特集でした。

この特集を読んでみて、アメリカらしい、「利益追求型・合理的な考え方」が企業だけではなく、社会を構成する様々なところに入り込んでいることにより、いろんな弊害が発生ているのだなと思いました。


上記で上げた状況をみても、必ず出てくる言葉は「金融危機以後」。
金融危機でおかしくなった経済を柔軟に吸収することができず、そのまま利用者・国民に影響が出ているように思われました。

今後、世界の成長センターがアジアへとシフトしていくなかで、リーダーを維持したいアメリカが、中国その他のアジア各国に対してどのような考え方、行動に出てくるか。
その考え方の根幹にあるアメリカ社会の現状がこのような状況(もっと悪くなるかも)だと誤った対応をすることにならないかちょっと心配になってきました。

しかし、アメリカには良い面もあると信じています。

失敗からすばやく学んで軌道修正する力、新たな状況に対応する柔軟性、行動力、議論する力。

これらをもっているので、困難にあっても、先送りせず対応し、きっといまの問題が発生している状況を改善していくと思います。

読み終わって

今回の特集は「アメリカの今の本当の姿」を深く理解するよい内容(けっこう衝撃的でしたが)になっていたと思います。

報道で見るアメリカとはちがった角度(国民視線)でみるアメリカ社会。
アメリカ社会の数年後が日本の社会と言われていますが、いまのアメリカ社会をよく観察しておくことによって、これから日本がどのようになっていくのかがわかるかもしれません。


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